犬は歌わない
原題?SPACE DOG これを「犬は歌わない」という邦題にしたのはセンスがあると思う。
名古屋シネマテークでわずか7日間の上映ということだったので、見逃してなるものかと汗まみれで鑑賞に行った。外は雷が鳴り響いていた。
予告編はちょことよこ観ていて、動物モノなのでもはや義務感で観ようと思ってはいたが、ライカが宇宙に発射されて振動している場面などにかなり抵抗は覚えた。
はたして冷静に鑑賞できるのかな?という でも私も映画好きとしての、動物好きとしてのプライドがあるので観ることは決定していた。ちなみに犬肉についてのドキュメンタリーも観たことがある。好きなものは知らねばという歪んだ強迫観念を持っている。
ただ「犬は歌わない」は予告編で覚悟していたよりもずっと過酷な映画で、「あ、これは途中で退席するやつかも?」と思った。結果、私が観る限りひとりも脱落()者はいなかったように思う。みんなメンタル強いな、、。
犬かわいい、犬かわいそう、の繰り返しにひたすら翻弄される映画だったように思う。
野良犬のパートはどれくらい現実のものだったのかは分からない(すくなくともリクガメは演出だろう)。それでも宇宙に旅立つために訓練を受け、人を信頼し、バイタルチェックのために体に穴を開けられたり切られたり、亡骸で帰還したり、生存したのちは繁殖が仕事となった犬たちの映像は間違いなく記録だと思う。
非人道的な動物実験といえば簡単に結論の出る問題だが、これらの恩恵を多かれ少なかれ私達は受けていると思うので(それも知らないのだけど)、しかも動物、ましてや犬は家畜、ペットであり人間ありきの生き物であるため、人類の発展のために利用されるのは必然なのかもしれない。
迷惑な野良犬として毒入りの肉で殺されるか、人に愛され人を愛し、宇宙に放たれ、数ヶ月も不安な状態で宇宙をさまよい燃え尽きるか、
いずれにせよ犬自身に生き方の選択肢など無いのだと絶望的な気分にはなった。そしてもちろん犬の希望など分からない。生存本能くらいしか。
動物を好きで守りたいと言いながら、動物を傷つける者は排除すべしと思いながら、どちらにも貢献できない立場に甘んじているのだと思う。なんて楽なんだろう。
そういった感じで、詩的なビジュアルと邦題に反してだいぶん酷な映画ではあったように思う。でも観てよかったと思うし、犬はやはりかわいいと思う。亀も、チンパンジーも、猫も。人も須らく尊い。
どこまで自分、つまり人間と同一視し感情移入するのか、それが何を招き、何を拒むのか、問いかけを刻むような映画だったように思う。
映画館と同じビルに入った書店で、関連書籍が無いかと思ったが見つからず、しかし動物倫理の本はあったのでそれを手に取った。